「チェコのお菓子」カテゴリーアーカイブ

ペルニークを求めて初夏のチェコへ 7 (プラハのペルニーク店)

6月5日、この日はペルニークのお店2件とアンティーク雑貨屋さん、ペルニークと伝統菓子にまつわるカフェ、それに個人作家さんお二人を巡る行程。

どこも見応えあり、味わいがいあり、素晴らしい作家さんに出会い、ペルニークが深まった一日でした。こんなに最高にヘビーな(良い意味で!)一日は人生でなかなかないくらい!このアポ術もアテンドもコーディネートも本当に見事なYさんでした。

 

で、最初の一件目、Pernikův sen  。プラハの旧市街広場から徒歩圏、マンション街のなかにひっそり佇む可愛らしいペルニーク店。2016年11月にオープンとのことで日本のガイドブックにはまだ乗っていないお店です(何だか嬉しい)。

お店の中はおもちゃ箱のような子供部屋のような…スパイスの香りに包まれペルニークが棚にぎっしり。個人の作家さんの作品も仕入れて販売しているとのこと。

お菓子好きな女性4人で焼き菓子やペルニークを作り販売するお店を作ったのだそう。間違いなく人気店になりそうな雰囲気。アイシングをほどこしたペルニークのミックスセットを購入。ほどよいスパイスとやわらかめの食感、わりと好みのタイプでした。

素敵なお店を見ると、菓音もこんな風にしてみたいな〜と思うのですが、、、もう少し先かな。十勝の素材とチェコの伝統菓子ペルニークでできることも考えてみたいし(…つぶやきです)。

 

さて二件目のペルニーク店、Tradiční český perníkという店名「伝統チェコ・ペルニーク」という意味なのだそう。

こちらのお店は洗練されたクラシカルなたたずまいのお店。白地のアイシングに絵筆と食用色素で描いたアートなペルニークも。かなり長時間見入ってしまいました。販売しながらも店頭で受注した特製ペルニークを制作していて、本当にスゴイ!私もまだまだ鍛錬が必要だわ、と触発される。

販売していた女性が丁寧に説明してくれた。チェコには国外から色々なものが入り国内で販売される。チェコの伝統は何だろう?と思った時に浮かんだのがペルニークだったのだそう。だから店名に伝統を入れているのだ、と納得。

そして家に伝わるペルニークの古いレシピがあったのだそう。お店を開くまでは使うことのなかったそのレシピを起こし、お母さんがペルニークを作って焼き、お嬢さんがアイシングを施し販売を担当。母娘連携プレーが素晴らしい。家にペルニークレシピが伝わっていることも素晴らしいし羨ましい・・・。スパイスについて聞くと、色々使っているとのことだけど興味深いのはラベンダー。ドライを粉にして使うのだそう。確かにココのお店のペルニークは独特なスパイスの風味でした。

 

それにしてもアイシング技術は高いし、アートセンスは優れているし、販売のセンスも素敵。お店を開く前はレストランに勤めていたというけれど、、、お客さんを見分けて売るセンスも見事。「アジア人は見にくるけどあまり買わない。何故?」と質問された。「スパイスがあまり得意ではないけど、アイシングクッキーは好きだからスパイス控えめにしてみては?」と答えた。思いつきの返答だけど大丈夫だったかな・・・?

 

何にしても、女性で立ち上げたペルニークのお店、二軒とも素敵すぎる。お菓子が好き、チェコの伝統ペルニークを伝えたい、そしてお店を開く。やりたいことを形にする器用さと実行力。ペルニーク視点から見たチェコだけど、チェコ人って素晴らしい。

 

 

ペルニークを求めて初夏のチェコへ 5 (チェスキークルムロフ)

6月3〜4日はチェスキークルムロフへ。

一泊の地方旅行、プラハから高速バスで3時間ほど。

3日は土曜日、宿泊先のアンデェルの近く川沿いの公園でファーマーズマーケット開催。天気もいいしバスの出発前にマーケットへ寄り道!

8時オープンとガイドブックにあったけど8時前から沢山の人が。パンや野菜には行列、朝食の買い物かな。

ジャムやケーキ、お花もあって見てるだけでも楽しい。

イチゴ売り場の近くに行くと芳醇な香りが。花より団子・・・じゃないですが、香りとともにイチゴが食べたくなり小さなパックを一つ。日本で良く見る透明パックと同じくらいの紙箱にぎっしり詰められて250円くらい。しかも味が濃くて美味しい。チェスキークルムロフ行きのバスの中でしっかりいただきました。

 

バスに揺られて3時間、チェスキークルムロフ着。いいお天気です。

絵本にでてくるような風景の街並み。13世紀後半にヴルタヴァ川(モルダウ川)に建設が始まり、1992年に世界遺産に登録された歴史ある町です。

お城の壁は「だまし絵」が描かれています。戦後から廃墟同然になった町を資金不足の中で短期間で修復するために思いついたアイデアなのだそう。確かに石を彫刻したりしていたら膨大な時間と費用がかかるので「だまし絵」は素晴らしい発想。遠くから見ると意外にそれっぽく見えます。

 

この町へ来たのは、ここで初めてペルニークに出会ったから。・・・というと格好いいけど、ツアーの中に組み込まれていたから(笑)泊まるホテルも昨年同様のホテルルゼ。修道院を改装して作られたアンティークなホテル。

ロビー脇のバーやホテル内のレストランも素敵です。朝食はここでビュッフェ。

 

ホテルに荷物を降ろして目的のペルニーク店へ。お城の入り口近くにあります。建物入り口はとても可愛らしいのですが今回は修復中だったため写真は昨年のもの。店内の雰囲気は変わらずオールドタイプとアイシングタイプの両方が置いてあります。

店員さんの女性に、昨年旅行で訪れてペルニークを初めて見て感動したこと、再びチェコでペルニークを取材しにきたこと、製菓業を営んでいて日本にペルニークに伝えたいことを拙い英語で伝えると、何とか伝わったようで喜んでもらえた。

早速、北海道をgoogle earthで検索していた。チェコと北海道が繋がったらいいなぁ。十勝は特にチェコの田舎町と気候や風景が似ていると思う。白樺や麦畑があって、防風林があって・・。

今回購入したペルニーク。型押しのオールドタイプは昨年同様の箱入り。アイシングはおそらく同じ作家さんが作っていると思われる。柄の施し方、花や葉の描き方が同じで再び出会えた!と嬉しくなった。

昨年は素敵な紙の手提げ袋入りだったけど、今回は白無地のビニールバック。たまたま在庫切れならいいけど・・・。

 

ペルニーク店を後にして街中をプラプラ。天気良くてとにかく暑い。さわやかな気候を想定していたのですが、、汗が吹き出る暑さでした。

お城までの坂道がキツイ。初夏なので花がたくさん咲いてます!

プラハにあるコヒノール文具店、チェスキークルムロフにもあります。小さな店舗でややお土産物屋さんっぽい。入り口の扉にはチューブ絵の具の飾りがいっぱい!しかもチューブの先が何故か指の形。ちょっとシュールです。街中にはショコラティエも。

お城の庭園は健脚の方にオススメ。行き着くまで急坂!しかも広大な庭園。ヴルタヴァ川は暑い日ということもあって水浴びしている人、ボート遊びをしている人、のどかな光景。

暗くなるのは夜10時頃。夕暮れ頃の町の灯りが素敵です。

チェスキークルムロフは観光メインでした^^

ペルニークを求めて初夏のチェコへ 4 (Muzeum perníku a pohádek)

6月2日、パルドビツェで取材3件目。ペルニーク博物館です。

プラハにあるジンジャーブレッドミュージアムは店舗であり素敵なジンジャーブレッドを販売していますが、こちらのペルニーク博物館は本物の博物館。お店ではありません。

 

ヤノシュさんの工房からレストランで休憩してタクシーで博物館へ。

住宅街を通り、古城を見ながら鬱蒼とした林道を抜けると博物館があります。パルドビツェ駅からタクシーで20分くらい。ここまで来た日本人は何人いるだろう?というくらい観光地とは無縁の場所です(笑)

空は快晴、平日ののんびりとした空気が漂う午後、赤壁の家のような建物へ。ガイド付きの入館料70コルナを支払って待っていると、上品な年配の女性が笑顔でやってきました。

右の入り口から入ると、ヘンゼルとグレーテルの童話の内装が作られています。博物館の建物は童話を模して建てた家なのだそう。

写真の黄色い看板の4つの穴は太っているかどうかを試す指の穴なのだそう。作りが凝ってます(笑)

でも、チェコ版ヘンデルとグレーテルはグリム童話の内容と解釈を少々変えているらしく、チェコに元々伝わる優しい魔女が描かれているらしい。

 

何にしてもお菓子の家というモチーフは世界共通のようで、家型のペルニークを沢山見ました。そして、展示室には世界から集めたヘンデルとグレーテルの童話本がありました。もちろん日本からも!(下の写真:日本語版は写真左上の方にあります)

博物館の中は展示室が細かく分かれていて、ヘンデルとグレーテルにまつわるお話しが終わると「では魔女を読んでみましょう〜」とガイドさんが言いドアをノックすると奥から返事が・・・。

何とも凝った設定です。ドアの奥には魔女がいました。しかし何故か男性(っていうかおっちゃんだった)。部屋の作りは素敵で、オーブンを備え室内で伝統的なスタイルの型押しペルニークを制作。型抜きの実演や木型の説明も詳しく教えてくれて。

おっちゃんやー!と思った魔女の男性は親族が木型職人とのことで木型に詳しく、最短でも制作に三ヶ月かかること、長いもので三年、使う気はフルーツ系の木などと色々教えてくれた。

木型を持つおっちゃんのオナカ、ちょっと出過ぎ(笑)

こんな素敵な工房でペルニークを作りたい・・・。

 

ペルニーク木型も芸術品であることに驚き、チェコ人の手仕事のすばらしさに感動。チェコ人の子供たちがもっと博物館に来たら良いのに勿体ない。そんな思いを通訳Yさんに伝えてもらうと、魔女のおっちゃん曰く「チェコ人たちは日本の柔道を習いに行き、日本人がペルニークを習いに来る(笑)」。

なお、木型職人はペルニークのためだけでなく染物などの木型も制作するそうで、チェコの手仕事の中に息づく職人技であるとのこと。

 

ここの製造風景の部屋を出ると、いつくかの童話のような展示室があり出口へ。最初は子供向けの展示かなと思ったけど、ガイドさんのペルニークの説明は素晴らしく、歴史背景を分かりやすく教えていただくことができたので、十分大人向けの博物館でした。

午前中に取材したヤノルバさんとヤノシュ氏の作品も展示されていて、パルドビツェがペルニークの町であることを証明し、皆で作り上げていることが伺えた。

この博物館はパルドビツェの町営でなく、私営とのこと。ガイドの女性は館長のお母様で親族達に伝わるペルニークの話しやペルニークに関わる人たちから聞いた話しをまとめてきた、とのこと。それを私営で博物館を作り運営しているのだから本当にすごい。

そんなガイドさんからペルニークの本をいただいた。英語なので何とか日本語に訳したい。できればいつかペルニークの和訳本出したい・・(妄想)。味のある写真が掲載されています。

「ペルニークの町、パルドビツェ」

ISBNコードがないので書店販売はなく博物館だけの扱いのようです。

ペルニークを求めて初夏のチェコへ 3 (Pardubický perník Pavel Janoš)

6月2日、パルドビツェの町で取材2件目。

Pardubický perník Pavel Janoš、このパベル・ヤノシュ氏の工房はお父上の代から続く二代目のペルニーク工房の社長。数々のコンテストで受賞し、「ペルニーク王」の称号を持つペルニーク界では有名な人物。新聞やWEBニュースでの掲載記事も多数。

 

こちらの工房も閑静な住宅街の中にあり、工房件店舗の可愛らしい建物。

ショーウインドウには表彰状(?)や王冠のペルニークが。

こちらも製造中でお忙しそうな中、取材に対応していただいた。事前のYさんからの情報で「ウエルカムな雰囲気、とりあえずコーヒーを飲みにいらっしゃい」という感じで期待大の取材先。

経営者のパベル・ヤノシュ氏は50代のダンディな雰囲気。過去の作品や地元紙の掲載記事を紹介していただき、レシピや製法はヒミツとしながらもペルニークの歴史やパルドビツェでペルニーク製造が盛んになった由来などを教えていただいた。

すごいな、と思ったことのひとつに、どんな質問を投げても必ずヤノシュ氏が応えてくれること。製造経験だけでなく知識の豊富さ深さ、歴史の造詣の深さに驚かされる。日本から来た取引先でもない私たちに、丁寧に説明してくれる姿勢。伝統菓子としてのペルニークをきちんと伝えたい、そういう姿勢が伝わってくる。

Yさんの通訳を介しながらも、目をしっかりみて話しかけてくれる、真摯な気持ちが伝わってきて嬉しかった。

ペルニークの伝統的な製法はとても特殊。生地の段階で長期熟成をするのだそう。一般的なクッキーでは考えられないけど熟成期間は数ヶ月にも及ぶ。熟成することでスパイスが豊かな香りになりまろやかになるのだそう。他にもペルニークならではのヒミツの製法を教えていただいた。日本で再現できるかは不明だけど、パルドビツェの伝統的製法にただ驚くばかりでした。

写真:ヤノシュ氏の店舗カフェ、カフェ奥の棚には表彰状やトロフィーが。

 

かなりお時間をいただいてお話しをお伺いし、ヤノシュ氏の取材を終えてお店で数点のペルニークを購入。手のひらに収まるくらいの大きさで30~50コルナくらい。デザインは比較的ラフなものも多いけれどアイシングが施してある。生地は原料も製法にもこだわっているのにこの価格。プラハの半分か1/3くらい。本当に安い。田舎価格なのかな…。

 

Yさんがあとからポツリ。「女性スタッフが何度かヤノシュ氏を呼びに来てたの通訳しなかったけど、製造室に早く来てくださいって。忙しい中でも取材に応じてくれてよかった」と。

経営者としても、大きな特注品を製作する職人としても、そして創造性豊かなアーティストとしても尊敬すべきパベル・ヤノシュ氏。取引ではない日本からの取材に貴重な時間を割いてくれたこと、丁寧に説明してくれたことに感謝です。お会いできて本当によかった。Yさんのコーディネイトと通約に心からの感謝!

 

ペルニークを求めて初夏のチェコへ 2 (JaJa Pardubice)

6月2日、旅の二日目。ペルニークで有名な町「パルドビツェ」へ。

Yさんとホテルを出発したのは朝6時。チェコの田舎の工房は朝6時スタート!勤勉な日本人もビックリ。こちらも効率よく回るために早朝出発です。

 

写真:プラハ本駅とパルドビツェ駅売店のペルニーク

 

パルドビツェはプラハから東へ鉄道で1時間の小さな町。到着後はバスで移動、Yさんが事前に調べてくれたバスに乗り込みます。1件目の取材先は「JaJa Pardubice」、女性経営者の工房件店舗。家族経営からスタッフを20人前後雇用している企業さんとのこと。閑静な住宅街の中にある可愛らしい工房です。

経営者のヤノルバさん(Jarmila Janurová)は温かい雰囲気のかっぷくのいい60代くらいの女性。当初Yさんからウエルカムな感触ではなく「とりあえず取材OK」というニュアンスでしたが、いざお会いしてみたら「よく来てくれた」という感じで一安心。

工房は朝から忙しそうで、入り口には出荷待ちの商品が山積み。どれもアイシングを施した凝ったもの、しかも大型のもの。ヤノルバさんも取材中も席を外して工房内を出入り、本当に忙しい中だったのだと申し訳ない気分に…。

Yさんの通訳でペルニーク製造の概要を把握。

ペルニークのレシピや製法はそもそも門外不出、JaJaさんのレシピはヤノルバさんの家に伝わっていたものを元に試作を重ねて、美味しく作りやすいように改良されたものとのこと。さらに入手可能かつEU内で認められた食品(ナッツやドライフルーツ、フレーバーなど)をできる限り使用し、ケーキタイプのペルニーキを製造。

製造時の苦労話しで驚いたのはEUの食品基準。食品に直接触れる包装資材は全て証明書が必要、紙のラッピング包装資材も証明されたものを使用、一括表示にも厳しい記載の基準があり、アレルギーはコンタミ含めて必須項目。製造室の入室は健康診断書が必要。そのため、今回の取材は入室できずガラス窓の外から見学に。

日本なら20人前後の菓子工房なら入室OKがほとんどだし、包装資材の基準は特になく納品先が厳しい企業さん向けに証明書発行するくらい。EUの基準の高さに驚きです。

ヤノルバさんに「今後の夢、やってみたいこと」をお伺いすると、工房を大きくすることは全く考えていなくて、企業規模の大小ではなく、健康によいもの美味しいものを作り続けたいとのこと。

ただ、少し悲しそうに「グルテンフリーのペルニークを作ろうとしたけれど、食品基準の審査が厳しくて製造するに至らなかった」との言葉。

小麦大国でもグルテンフリーが求めらるのか、、しかもお菓子で!という思いと、基準が厳しくて製造できなかったということにも驚きでした。

また、人材不足の問題も抱えているとのこと。細かい技術やセンス、忍耐力を求められるペルニーク製造は大変だし、お給料もそれほど高くない。良い人材は高いお給料の会社へ行ってしまうとのこと。ピーク時は30名ほどいたスタッフは今は10数名とのこと。

日本も人材不足は問題になっているし、私自身もアイシングの細かさにスタッフを雇用できない苦労があり、ヤノルバさんに共感してしまった。

Yさんの通訳を介して、ペルニークの伝統を守りながら、美しいアイシングを施し素敵な商品を量産している素晴らしさに感動したこと、大変なことは本当に共感できることを伝えていただいた。

ヤノルバさんの商品は日本の農林水産省の大臣にあたる人物にご贔屓され、国賓級の方々へのギフトや国際会議のギフトに使われて製造が追いつかないほど、とのこと。家族経営から初めてスタッフを育て国内やEUで人気商品になるほどまでに成長し、今も丹念に作り続けている・・・その姿勢にひたすら感服でした。

製造室わきのスペースで工房特製ケーキをいただきながら。ケーキタイプのペルニーキはバタークリームをサンドしてチョココーティング。