ペルニークを求めて初夏のチェコへ 2 (JaJa Pardubice)

6月2日、旅の二日目。ペルニークで有名な町「パルドビツェ」へ。

Yさんとホテルを出発したのは朝6時。チェコの田舎の工房は朝6時スタート!勤勉な日本人もビックリ。こちらも効率よく回るために早朝出発です。

 

写真:プラハ本駅とパルドビツェ駅売店のペルニーク

 

パルドビツェはプラハから東へ鉄道で1時間の小さな町。到着後はバスで移動、Yさんが事前に調べてくれたバスに乗り込みます。1件目の取材先は「JaJa Pardubice」、女性経営者の工房件店舗。家族経営からスタッフを20人前後雇用している企業さんとのこと。閑静な住宅街の中にある可愛らしい工房です。

経営者のヤノルバさん(Jarmila Janurová)は温かい雰囲気のかっぷくのいい60代くらいの女性。当初Yさんからウエルカムな感触ではなく「とりあえず取材OK」というニュアンスでしたが、いざお会いしてみたら「よく来てくれた」という感じで一安心。

工房は朝から忙しそうで、入り口には出荷待ちの商品が山積み。どれもアイシングを施した凝ったもの、しかも大型のもの。ヤノルバさんも取材中も席を外して工房内を出入り、本当に忙しい中だったのだと申し訳ない気分に…。

Yさんの通訳でペルニーク製造の概要を把握。

ペルニークのレシピや製法はそもそも門外不出、JaJaさんのレシピはヤノルバさんの家に伝わっていたものを元に試作を重ねて、美味しく作りやすいように改良されたものとのこと。さらに入手可能かつEU内で認められた食品(ナッツやドライフルーツ、フレーバーなど)をできる限り使用し、ケーキタイプのペルニーキを製造。

製造時の苦労話しで驚いたのはEUの食品基準。食品に直接触れる包装資材は全て証明書が必要、紙のラッピング包装資材も証明されたものを使用、一括表示にも厳しい記載の基準があり、アレルギーはコンタミ含めて必須項目。製造室の入室は健康診断書が必要。そのため、今回の取材は入室できずガラス窓の外から見学に。

日本なら20人前後の菓子工房なら入室OKがほとんどだし、包装資材の基準は特になく納品先が厳しい企業さん向けに証明書発行するくらい。EUの基準の高さに驚きです。

ヤノルバさんに「今後の夢、やってみたいこと」をお伺いすると、工房を大きくすることは全く考えていなくて、企業規模の大小ではなく、健康によいもの美味しいものを作り続けたいとのこと。

ただ、少し悲しそうに「グルテンフリーのペルニークを作ろうとしたけれど、食品基準の審査が厳しくて製造するに至らなかった」との言葉。

小麦大国でもグルテンフリーが求めらるのか、、しかもお菓子で!という思いと、基準が厳しくて製造できなかったということにも驚きでした。

また、人材不足の問題も抱えているとのこと。細かい技術やセンス、忍耐力を求められるペルニーク製造は大変だし、お給料もそれほど高くない。良い人材は高いお給料の会社へ行ってしまうとのこと。ピーク時は30名ほどいたスタッフは今は10数名とのこと。

日本も人材不足は問題になっているし、私自身もアイシングの細かさにスタッフを雇用できない苦労があり、ヤノルバさんに共感してしまった。

Yさんの通訳を介して、ペルニークの伝統を守りながら、美しいアイシングを施し素敵な商品を量産している素晴らしさに感動したこと、大変なことは本当に共感できることを伝えていただいた。

ヤノルバさんの商品は日本の農林水産省の大臣にあたる人物にご贔屓され、国賓級の方々へのギフトや国際会議のギフトに使われて製造が追いつかないほど、とのこと。家族経営から初めてスタッフを育て国内やEUで人気商品になるほどまでに成長し、今も丹念に作り続けている・・・その姿勢にひたすら感服でした。

製造室わきのスペースで工房特製ケーキをいただきながら。ケーキタイプのペルニーキはバタークリームをサンドしてチョココーティング。