ペルニーク(ジンジャーブレッド)を求めて初夏のチェコへ 総まとめ1

昨年、チェコのペルニークという伝統菓子を知ってからちょうど一年。

今回チェコ在住のYさんにコーディネートと通訳をしていただいてのペルニーク取材旅。予想以上に収穫と出会いの大きな旅になった。これを読まれた方、ペルニークに関心のある方、よろしければ1〜10の旅の様子をご覧いただけましたら幸いです。

写真はチェスキークルムロフのペルニーク。オールドタイプ・壁掛け用。

 

旅のまとめとして、ペルニークの説明を少しばかり。

*ペルニーク(perník)はチェコの伝統菓子。

英訳はジンジャーブレッドですが、私個人の印象は欧米のジンジャーブレッドとはレシピも背景も異なりチェコ独自の伝統菓子という印象。

 

*ペルニークの歴史は古く、記述に残っているのは1300年初期の頃。

ルーツは古代エジプトで蜂蜜やスパイスを使用したパンにまで遡るらしい。

ペルニークの名前は、当初は胡椒(ペッパー)を使用し、胡椒のラテン語に由来するとのこと。ただし、現在は胡椒はほぼ使用していないのだそう。

 

*チェコで最初にペルニークを作ったのは男性修道士。

パルドゥビツェで聞いたペルニークの歴史。古い時代、修道院で作られたきたとのこと。ヨーロッパでパンは修道院にある窯で作られていたと聞きますが、それに近いことかもしれません。

またワインにあうお菓子をということでスパイスやハーブをきかせたペルニークが作られていた、とも。何にしてもこの当時はスパイスが大変貴重なものであった時代、ペルニークも高価なものであったと想像します。

 

*ペルニーク作りが盛んな町、パルドゥビツェ(プラハから東へ鉄道で約1時間)。ペルニーク工房が数社、ペルニーク博物館があり「ペルニークの町」として知られている。

マリアテレジアの統治時代に製造権を渡されたという説や周辺で小麦や蜂蜜、杏など原材料に恵まれていた等の説あるようです。また「パルドゥビツェのペルニーク」としてEUで商標を取得しており、パルドゥビツェで製造し使用原料にも規定があり、町でペルニークの品質を守っていることも大きな要素のようです。

 

*ペルニークの木型。

上の写真のように古いタイプのものは型押し。木型を使います。その木型はりんごなどのフルーツの木とのこと。制作には3ヶ月から長いもので3年もかかるとのこと。ペルニークの木型も芸術作品です。

 

*ペルニークのレシピは門外不出。工房での作り方やレシピは門外不出でその家に代々伝えられてきた秘伝のもの、とのこと。

製法についての詳細は秘密としながら、パルドゥビツェのヤノシュ氏はペルニーク生地を焼成前に三ヶ月熟成させるとのこと。そうすることでスパイスの風味がまろやかに豊潤になるとのこと。

生地を熟成させてからイースト菌を加え発酵させて焼成。クッキーではなくパンに近いソフトな食感。

チェコには「女の子が生まれたらペルニーク生地を作り保存させて成人の日にペルニークを焼く」という言い伝えがあるそうで、「生地を長期熟成させる」こともチェコ独自の製法のようです。

(家庭で作られるペルニークは長期熟成はしません)

 

*チェコでは「食べる用」「飾る用」のペルニークがあり、「食べる用」はパン(味噌パンが近い感覚!)のようなものからソフトクッキーのような食感のものまであるものの、食べて美味しいレシピを使用。「飾る用」は固いものは本当に硬くてそのままでは食べれないほど。スパイスの香りを楽しむために壁にかけたり、Xmasオーナメントにするとのこと。

工房やお店、個人作家さん、皆レシピや製法は違っても一様に「食べる」「飾る」の用途を分けて製造販売。

 

*ペルニークを粉末にして調味料に。焼きあがったペルニークを粉砕、粉状にして料理などにかけるという使用法がある。実際、ペルニークを粉末として販売している店舗あり、カフェでも伝統料理に粉末を提供しているところもある。

おかゆ、スープ、肉料理、クネドリーキ、様々なものにかけて甘いスパイスとして楽しむ習慣がある。

 

*ペルニークのスパイスは作り手それぞれの配合。古い記述によると90種類ものハーブやスパイスを調合していたとの記載も。現在は名前の由来になた胡椒はほぼ使われていないものの、ジンジャーとシナモンは一般的、他は工房それぞれで異なる。

ひとつ際立って興味深かったのはラベンダー。プラハのペルニーク店でドライの花弁を粉末にして使用して作り販売しているとのこと。その味は独特、もしかしたら苦手という人もいるかも?という味わい。北海道にもラベンダーありドライも入手できるので一度トライしてみたい。

 

*ペルニークにはクッキータイプとケーキタイプがある。

クッキータイプの中にも食べる用・飾る長期保存用があると記載しましたが、それ以前にクッキーのように型抜きしたもの、カステラ生地のようなケーキタイプのものがあり、後者はペルニーキ(perníčky、ペルニークの複数形)で記載されることが多い。四角にカットされたソフトな生地にジャムを挟んだもの、さらにチョココーティングされたものなどがある。

 

・・・文字文字の説明ばかりになってしまったが、ペルニークは本当に奥深いです。

一度の取材では終わらず「ここが始まり」という気持ちです。少しずつペルニークを試作し自分なりに解釈し、作っていきたいと思います。それは同時にチェコの伝統を感じていくことでもあり、楽しみであります。