「チェコ旅」カテゴリーアーカイブ

ペルニークを求めて初夏のチェコへ 10 (ペルニーク作家ペトラさん)

6月5日最後の訪問先、ペトラさんのご自宅へ。

プラハ市内から少し離れた自然豊かな地域の素敵なご自宅でペトラさんご夫妻が迎えてくれた。大きめのペルニークを10点ほどご用意くださっていて、どれも本当に素晴らしい作品。なのに写真を撮り忘れた〜!

無事に持って帰れたペトラさんの作品の一部。

 

ペトラさんは独学で製菓を学び、マジパンやシュガーペーストを使用したオーダーメイドのケーキを製作してきたとのこと。何十点にも及ぶケーキの写真を拝見、センスの良さと技術の高さが伝わってくる。独学で、ということにも驚くほどの作品。

ペルニークの製作も独学、書籍をみて試作しながら作ったとのことで、「伝統については日本のアナタの方がよく勉強している」と笑っていた。

ペトラさんのスゴイところは技術の開発力(というか根性)。より良いものを求めて素材は配合を徹底的に試す。「食べるもの」「飾るもの」という双方で最良のものを追求する情熱。

 

ペルニークは「飾るもの」「食べるもの」に分かれる。これは今回のチェコで工房でもお店さんでも聞き、チェコ人が用途別にレシピを使い分けていることに驚いたことでもありますが。ペトラさんも同様にレシピを使い分けて製作。

そしてレース模様のアイシングが一番の関心だったのですが、ペトラさんのアイシングを作る過程から施す技術にも驚愕。教科書に頼らない独自の最良の製作法を編み出し原料も何通りも試して硬さ・絞りやすさを調整している、独学だからこその技。

 

私自身も製菓は独学、教科書に頼らないからこその良し悪しを多々味わってきた。失敗もたくさんしてきた。失敗は怖いことではなく次によいものを作るタタキ台とうい意識。やり方を知っているから強いし、より良い方法を試すことも知っている。

ペトラさんの技術や作品は追いつけないほど遠いけど、それでも同じ独学の製菓業者として共感できることが沢山あり、ときにペトラさんの経験話に涙しながら聞き入ってしまったり。お会いできて、菓子職人としてお話しできて良かった!と心から思えた貴重な時間だった。

個人作家さんのペトラさんをコーディネートしてくれたYさんにも心から感謝!

 

 

ペルニークを求めて初夏のチェコへ 9 (書籍Perníkyの著者)

6月5日の午後、書籍Perníkyの著者であるクヴィェタ・コレチュコヴァーさんとカフェでお会いすることに。

Perníkyは昨年のチェコで購入したチェコ語のレシピ本。チェコ語なので写真を見るだけだったものの、歴史や原材料、レシピなど幅広く記載されている書籍。私にとっては唯一の教科書ともいえる大切な書籍。その著者に会えることが本当に嬉しかった。

 

クヴィェタ・コレチュコヴァーさんは60代後半くらいの魅力溢れる女性。コーディネイターYさんからの事前の連絡で「甲賀さんの黒地の花柄のデザインに非常に興味を持たれている。彼女の製作する陶器に同じような黒地の絵柄の作品がある」といただいた。

旅の直前にコレチュコバーさんの書籍のレシピを2種類、google翻訳で原材料名を訳して試作。生地の水分量とスパイスの種類・分量はかなり適当!それでもペルニークに近いものができ、写真のものをコレチュコバーさん用に包装して持参。

 

昨年ペルニークを知り、美しいデザインとスパイスの香り、味に魅了されたこと、お土産に買ったのに旅行中に食べてしまったこと、そして書店にあったPerníkyの本を購入。ペルニークは単に美味しいお菓子でなく伝統のあるお菓子であることを知ってますます興味を持ったことをお伝えした。

コレチュコバーさんは通訳Yさんの言葉に大きく頷きながら嬉しそうに微笑んでくれて、私自身も心が熱くなった。

 

コレチュコバーさんは村のおばあさんのレシピを知り、ペルニークに興味を持ったけれど誰も教えてくれなくて一人レシピ開発をしたのだそう。何度も試作して、作りやすいレシピを開発したとのこと。

ご自身で苦労しながらレシピ開発したこともあり、今回お会いして本当にたくさんのことを教えてくれた。生の生地を作って持参していただき、生地の状態や小麦粉やスパイスのことを一つ一つ丁寧に教授してくれた。

チェコと十勝の小麦の違いも感じた。ライ麦についてはチェコで購入してみて、とラベルを渡され、最終日になんとか購入!どんな違いかはまたこれから試作してみて、なのですが・・・。

 

師匠がいない私にとってコレチュコバーさんの存在は本当に大きい。レシピや作り方を教えてくれるだけでなく、おばあちゃんから受け継ぐ家庭のおやつとしてのあり方を教えてくれたこと。そしてペルニークだけでなく陶芸作家としても活躍しながら、地域の素材を生かしたお菓子の本を製作中、日々レシピを開発していること、お忙しそうな様子だけど人生を謳歌している空気が伝わってきて人間としての魅力を感じた女性だった。

 

 

 

 

ペルニークを求めて初夏のチェコへ 8 (Café Savoy)

6月5日、午前中に二軒のペルニーク店を訪問しお昼はカフェへ。このカフェもペルニークにまつわるもの、そしてチェコの伝統菓子を味わいに。

 

ところで、チェコの伝統菓子を調べると面白いことがわかった。チェコのガイドブックで伝統菓子として紹介されているmedovník(メドヴニーク)という蜂蜜ケーキがある。薄い生地にキャラメル風味のバタークリームを挟み表面はケーキクラムをまぶしたケーキ。素朴な見た目ながら割と手をかけて作るもので甘くて濃厚な味わい。昨年のチェコでもよく見かけたし実際に食べても見た。このメドヴニークが実は伝統菓子ではないらしい。

メドブニークがチェコに現れたのは1990年前後らしい。おばあちゃん世代には馴染みのないケーキとのこと。アルメニアやグルジアに似たようなケーキがあり移民者がメドヴニークの会社を設立したという事実もあるらしく、何にしてもチェコで知られるようになったのは1990年代前半から半ば頃とのこと。

ペルニークとともにチェコの伝統菓子を調べたくて、コーディネーターYさんに相談したところ判明した事実。これを短期間で調べてくれたYさん、調査能力にも秀でいる本当にスゴイ人です。

 

メドヴニークが伝統菓子ではなく今回の取材から外して、かわりに教えてくれたのがチェコの伝統菓子オヴォツネー・クネドリーキ(フルーツのクネドリーキ)。WEBのgoogle翻訳でチェコ語を入力すると「フルーツ餃子」と出てきて興味津々(笑)。

チェコはヨーロッパ各国の文化の影響を受けることも多く、ハプスブルグ家の勢力下にあった時代にその影響は大きかったと想像される。アップルシュトゥルーデルは恐らくその頃にチェコへもたらされたものらしい。という感じでチェコ伝統と思っていたけれどルーツは他国というものがある中、チェコ独自の伝統と言えるお菓子としてオヴォツネー・クネドリーキが挙げられるとのこと。

 

前置きが長くなったけど、そんな訳でオヴォツネー・クネドリーキ(フルーツのクネドリーキ)を食べにカフェ・サヴォイへ。

1893年創業の老舗のカフェ、アンティークな雰囲気が漂う店内。パンやケーキも店内で製造、どれも美味しそう。

さっそくオヴォツネー・クネドリーキを注文。そして自家製レモネードを。ラズベリー入り(だったかな)の美しい赤い飲み物。そして待ち焦がれたクネドリーキ!旬のイチゴを使用、茹でたてのプリプリのお菓子。

画像検索でも見て不思議な食べ物と思っていたけど、やはりこの姿!下に凝乳(カッテージチーズ)を敷いていて、ペルニークの粉末と溶かしバター、粉砂糖が添えられている。このセットも伝統的なスタイルらしい。

ペルニークの粉末といえばヤノシュ氏のお店やプラハのペルニーク店でも販売されていた。料理のスパイスとして使うとのこと。肉料理やスープ、おかゆなど様々な食事の甘いスパイスとして。日本ではお菓子を粉末にして料理に使うって発想が無いので、実に興味深い。

実際に食べてみる。もっちりした生地にフルーツの甘みと酸味、それにチーズのまったりとした味わいがマッチ、そこにペルニークのスパイスがピリリと効いてくる。何層にも重なった味わいが面白いし美味しい。

二口目にはバターと粉砂糖を添えて。さらにバターの風味がまったりと寄り添ってくる。Yさんが十勝には乳やチーズもあるから作れるかも、という提案に納得。紹介してくれたことに感謝。十勝でオヴォツネー・クネドリーキができたら面白いなぁ。皮は麺用小麦でイケそうだし、カッテージチーズは地元産で可能、イチゴやベリーもあるし溶かしバターもOK、ペルニークは自分で作る。完璧だ!十勝産オヴォツネー・クネドリーキ!(妄想に浸ってしまった)

1個の密度が高くもっちりしてお腹にもたまる。2個でお腹いっぱいに…。ペルニークの粉末は写真の通り。ミキサーで粉砕したような感じ。甘くてスパイシー、このままでも美味しく沢山かけてみた。

 

大量に写真を撮っていたら向かいの席にいた男性もカメラを取り出しプレートを撮影していた。カメラはソニー。ちょっと嬉しい。

コーディネイターYさんの話によると、チェコ人の日本人への印象は良いらしい。色々な素晴らしいものを発明した国とのことで、日本とその他アジア諸国というイメージらしい、とのこと。

昔、フランスの地方都市で日本人は見下されて相手してくれない空気感を感じたことがある(まれにだけど)。一方でフィンランドへ行った時は親日家が多く(日露戦争で勝利した日本、ってことで)握手を求められたこともある。

なので、チェコは?という質問に答えてくれた結果だった。

ちょっと嬉しいチェコの日本事情。何にしてもチェコは美味しいもの、美しいものが沢山詰まった国ということが判明。また行きたい。

 

ペルニークを求めて初夏のチェコへ 7 (プラハのペルニーク店)

6月5日、この日はペルニークのお店2件とアンティーク雑貨屋さん、ペルニークと伝統菓子にまつわるカフェ、それに個人作家さんお二人を巡る行程。

どこも見応えあり、味わいがいあり、素晴らしい作家さんに出会い、ペルニークが深まった一日でした。こんなに最高にヘビーな(良い意味で!)一日は人生でなかなかないくらい!このアポ術もアテンドもコーディネートも本当に見事なYさんでした。

 

で、最初の一件目、Pernikův sen  。プラハの旧市街広場から徒歩圏、マンション街のなかにひっそり佇む可愛らしいペルニーク店。2016年11月にオープンとのことで日本のガイドブックにはまだ乗っていないお店です(何だか嬉しい)。

お店の中はおもちゃ箱のような子供部屋のような…スパイスの香りに包まれペルニークが棚にぎっしり。個人の作家さんの作品も仕入れて販売しているとのこと。

お菓子好きな女性4人で焼き菓子やペルニークを作り販売するお店を作ったのだそう。間違いなく人気店になりそうな雰囲気。アイシングをほどこしたペルニークのミックスセットを購入。ほどよいスパイスとやわらかめの食感、わりと好みのタイプでした。

素敵なお店を見ると、菓音もこんな風にしてみたいな〜と思うのですが、、、もう少し先かな。十勝の素材とチェコの伝統菓子ペルニークでできることも考えてみたいし(…つぶやきです)。

 

さて二件目のペルニーク店、Tradiční český perníkという店名「伝統チェコ・ペルニーク」という意味なのだそう。

こちらのお店は洗練されたクラシカルなたたずまいのお店。白地のアイシングに絵筆と食用色素で描いたアートなペルニークも。かなり長時間見入ってしまいました。販売しながらも店頭で受注した特製ペルニークを制作していて、本当にスゴイ!私もまだまだ鍛錬が必要だわ、と触発される。

販売していた女性が丁寧に説明してくれた。チェコには国外から色々なものが入り国内で販売される。チェコの伝統は何だろう?と思った時に浮かんだのがペルニークだったのだそう。だから店名に伝統を入れているのだ、と納得。

そして家に伝わるペルニークの古いレシピがあったのだそう。お店を開くまでは使うことのなかったそのレシピを起こし、お母さんがペルニークを作って焼き、お嬢さんがアイシングを施し販売を担当。母娘連携プレーが素晴らしい。家にペルニークレシピが伝わっていることも素晴らしいし羨ましい・・・。スパイスについて聞くと、色々使っているとのことだけど興味深いのはラベンダー。ドライを粉にして使うのだそう。確かにココのお店のペルニークは独特なスパイスの風味でした。

 

それにしてもアイシング技術は高いし、アートセンスは優れているし、販売のセンスも素敵。お店を開く前はレストランに勤めていたというけれど、、、お客さんを見分けて売るセンスも見事。「アジア人は見にくるけどあまり買わない。何故?」と質問された。「スパイスがあまり得意ではないけど、アイシングクッキーは好きだからスパイス控えめにしてみては?」と答えた。思いつきの返答だけど大丈夫だったかな・・・?

 

何にしても、女性で立ち上げたペルニークのお店、二軒とも素敵すぎる。お菓子が好き、チェコの伝統ペルニークを伝えたい、そしてお店を開く。やりたいことを形にする器用さと実行力。ペルニーク視点から見たチェコだけど、チェコ人って素晴らしい。

 

 

ペルニークを求めて初夏のチェコへ 6 (ちょっと脇道へ)

ペルニークのことを書こう!とブログを書き始めたのですが、それ以外のことも素敵なチェコ、プラハ。アートや音楽、アンティーク、かわいい雑貨、美味しいもの・・・本当にたくさんのアレコレがたたずむ街。

ちょっと脇道へそれてプラハの街のアレコレを。

 

6月4日、お昼前にチェスキークルムロフを出発。ずっと天気良かったけれど、この日の移動中だけ大雨。どちらかといえば雨女なワタクシですが、今回の旅は本当に天気に恵まれている。暑すぎるのは難点だけど雨よりは断然イイ。同行のピアニスト女性が相当な晴れ女らしい。感謝!

それはそうとプラハに着くと雨は止み再びホテルアンデェルへ。すると何故かグレードアップしてくれてセミスイート。ミニキッチン付き、浴槽とシャワー室別のバスルームは床暖房完備。一昨日とぜんぜん違う〜。

日曜の夕方近くプラハの街歩き。市民会館(スメタナホール)でその日の公演をチェック、モーツァルト&ドヴォルザーク/チェコラジオシンフォニーの演奏でした。

アールヌーヴォー様式の歴史ある建築物、内装の一部をミュシャが手がけているコンサートホール。映画「のだめカンタービレ」の撮影が行われたホールとして日本人にすっかり有名に(^^) 入り口から階段、ホール前の内装も素晴らしいです。

演奏は8名の室内管弦楽、少な〜と思ったけど音色の深さや奏者の息、迫力あり日本ではなかなか聞けない演奏でした。……日本の技量が劣るという訳ではありません。でも何が違うのやら。奏者たちが本当にのびやかに笑顔で幸せそうに奏でる様子も素敵で。

席は半分くらい空状態、観客はおそらくほぼ観光客。プラハの春(音楽祭)終わったばかりだし。でも、このガラ空きの状態でも迫力の演奏、ならば満席で本気勝負の演奏ってどんなんだ?、、次回可能なら聴いてみたいと思ったチェコラジオシンフォニーの演奏でした。

 

帰り道にスーパーでお買い物。食材が安くて本当に羨ましい。しかも美味しい。写真は最終日のBILLAですが、価格や品物はこんな感じ。

瓶もののピクルスやトマトソース、オリーブは150円しないくらい。1コルナ=約5円くらいなので、表示価格の5倍くらいが日本円です。瓶ビールは50〜150円。羨ましい。

パンも野菜、果物も安い。りんごなんて1kgで150円くらい。食事情だけみて「あぁ、プラハに住みたい」と思うワタクシ。安直です、分かってます、でも食天国のプラハです。

この日はホテル部屋メシ。お惣菜やレバパテ、フルーツ(ラズベリーやメロン!)、ウォッシュチーズ、パン、ビール、こんなに買って1,500円くらいだったか…。もちろん、どれも美味でした!